私の天文遍歴(成長編その2)

1969

アポロ11号の興奮で、宇宙旅行ものの本も読みあさったmasarukは、
ロケット開発から、人工衛星、惑星探査、有人宇宙船と、
宇宙開発にもかなり明るくなっていった。 これは現在に至っても仕事で役立っている。

夜明けに季節外れの星座を見るのが好きになった私は、
夏休みにはよく早起きして東に姿を見せるオリオン座の姿に感じ入ったものだ。
冬に見るのはあたりまえ。 夏に見るオリオンだからミスマッチな神秘さを感じた。
この年に流行った「夜明けのスキャット」が大好きで、夜明けの静けさの中で、
ル・ルルルルー♪・・・と口ずさみながら星空見上げる、変な小学生だったのである。


さて、夏が過ぎてもまだ天体望遠鏡はタンスの上。
だがついに、意を決して望遠鏡と向き合う日がやってきた。

1969年9月19日。 
子供時代の1年は大きい。 あらゆる理解力が大きく伸びていた。
箱から出した望遠鏡をひとりで組み立てる。 説明書もよくわかる。
遠くの高圧鉄塔でファインダーと主望遠鏡の向き(平行度)を合わせる。 OK。
あとは夜を待つだけだ。 さあ今夜こそ・・・。

日も暮れた南西の空には、半分より少し丸みを帯びた月と火星が並んでいる。
最初に天体を導入するのはファインダーの役目。
そしてセオリー通り、はじめは低倍率の接眼レンズを主望遠鏡にはめる。
ファインダーの十字線に月が乗った。
期待に胸を膨らませながらアイピースを覗く・・・。
ファインダーの調整が雑だったのでど真ん中ではないが、月が入っている。
思ったよりも大きい。 ドロチューブとヘリコイド(焦点装置)でピントを合わせる。
まぶしさを感じる月の表面に薄暗い海、欠け際に見事なクレーターの連なりが浮かび上がった。
自分の力で捉えた、夢にまで見た天体望遠鏡の世界である。 「ああ、すっごい!」
42倍のアイピースを、140倍のものに交換した。 
目の前に迫る、38万km彼方の真実の姿に圧倒されてしまった。

はじめてのイメージ再現

上弦過ぎの月面
  
火星はただの火玉


次に傍らに光る妖しいオレンジの火星に筒先を向ける。
地球接近からすでに3ヶ月。 高倍率でも、そこに見えたのは、
低空の大気の乱れでゆらめく、小さなオレンジの玉。 模様など何もわからなかった。

その晩のハイライトはなんと言っても土星だ。

夜8時を回って、東の低空に土星が姿を現した。
この年にはいっぱしに「天文年鑑」なども見るようになり、惑星が夜空のどこにあるかくらいは
わかるようになっていた

少しずつ高度を上げてきた土星に神経を集中して、望遠鏡をぐいっと東に向けた。
焦るあまり、最初は低倍率にしておくというセオリーを忘れて、アイピースは高倍率のまま。
なかなか視野に土星が入ってこない。 不意に視野を光体が横切る。
少し長細い・・・環をつけた土星に違いない。
行ったりきたりを繰り返し、やがて視野の真ん中に土星が飛び込んで止まった。
それは夢にまで見た、リングをつけた紛れも無い土星の姿だった。

土星初体験イメージ

1mほど離れて、
片目で見ると、
倍率140倍の感じに近い


思ったよりも小さい。 しかし本体を取り巻く環の存在はとてもよくわかる。
なんて不思議な星なのだろうか!


それからのち、さらに大きな望遠鏡を手にして
はるかに大きく鮮明な土星を何度も見ているが、
なんといっても1969年の秋に苦労して覗いたあの小さな土星こそが、
私にとっては何物にも代え難い宝石のようなイメージなのである。