私の天文遍歴(成長編その11)

1974-1975

1974年秋。 カープはこのシーズンも最下位で3年連続のどん尻。
秋が深まって広島の空が高く澄んできた。 
しかし高校受験のために、宵は繁華街にある塾通い。
星は、住まいのバルコニーから息抜きのために眺める・・・というのが多くなった。
それでも勉強に優先して楽しみにしていた天文現象があった。

11月29日の夜遅くから30日の未明にかけて好条件の皆既月食。
幸い天候には恵まれて、風は冷たいながらも素晴らしい透明度の夜であった。
1974年11月の皆既月食

1974年11月29〜30日の皆既月食
本格的に月食を撮影したのはこのときが初めて
15センチ反射望遠鏡の直接焦点撮影
                (焦点距離1300ミリ)
フジクロームR100
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1975年が明けた。昭和50年。
元日の日記をみると、広島では朝から宵まで雨だったようだ。
ただ23時30分頃から雲が割れ、透明度最高の空にシリウスがきらめきだした由。
正月は受験勉強も適当で、2日の晩には15センチ反射望遠鏡で
土星などを観望したと記されている。

1月の半ばには連日、水星と金星を見ている。
また、澄んだ晩には南の低空にカノープス(竜骨座α)もちょくちょく見ている。
カノープスは日本では地平線すれすれで非常に見づらく、
一度みると七十五日長生きするという言い伝えがあるくらいだ。
日記をめくると、受験間近でも星空に関心を払っている様子がよくわかる。

2月終わりから3月半ばにかけては高校受験の本番。

3月19日に志望の県立高校に受かった。
気兼ねなしの「星三昧」の日々が戻ってきたのである。

夏休みに友人と山陰をまわる旅をした。
まず島根県西部の浜田の海辺でキャンプ。
 広島ではとても見られない見事な夏の天の川のもと、
ギターをかき鳴らして陽水の「能古島の片思い」を唄ったのがいい思い出だ。

出雲を経由して東へ。 鳥取県の大山(だいせん)でもキャンプをした。
眼下はるかに弓ヶ浜、水平線には隠岐の島影がうかぶパノラマが雄大。
標高1000mほどの大山桝水原でのキャンプの夜。
天気にも恵まれて星空はそれはそれは美しかった。
特に天文ファンでもない友人2人も、さすがに迫るような星空に圧倒されたようだった。
それは8月4日だったから、水瓶座δ流星群の名残もあったのだろうが、
銀河の濃淡が鮮やかな星空を眺めていると、流れ星がたくさん飛んだ。
中に頭上を150度くらいもゆっくり流れる長経路の流星があって、
実はそのとき、ある願い事のエッセンスを3度唱えることに成功したのだ。
一緒にいた仲間は「あっ、本当に言いやがった!」・・・
流れ星のご利益やいかに・・・長い時間ののちに現実となったことだけ記しておこう。

キャンプから帰ると、テレビニュースで日本人の発見した彗星が北西に見えているという。
さっそく双眼鏡を北斗七星のほうに向けてみると・・・
ミザールの近くに青みがかった彗星の姿がすぐに見つかった。
小林・バーガー・ミロン彗星(1975h)だった。

高校1年の夏休みも残りわずかとなった8月30日の宵、
空の青みが次第に深まって次々に星が姿を現わしはじめたなか
北東の空高くにかかる白鳥座の姿がおかしいことにすぐ気づいた。
1等星デネブの北に見慣れない2等星が光っているのだ。 
一緒にいた星仲間のO君と2人で、星であることを確かめて中国新聞に電話をしてみた。
すると、それは20時間ほどまえに山口の高校生が発見した新星であることがわかった。
前日の晩のことを思い出した。
バルコニーから身を乗り出して、頭上の夏の大三角あたりを双眼鏡で眺めていたのだ。
ただ白鳥座の北側はバルコニーのひさしに隠れて目が届かなかったのだった。
いつものように外にでて空を仰いでいれば、
あるいは出現したての新星(3等星)に気づいたかもしれない。
 新天体との遭遇チャンスとはこんなもの。
白鳥座新星1975

1975年 白鳥座新星(V1500 Cyg)
もっとも明るくなっている頃
1.7等級の明るさ
V1500 Cygとは
白鳥座の1500番変光星という意味
この1975年の白鳥座新星(V1500Cyg)の第3発見者は、
千葉県内で夏合宿をしていたN大学天文学研究会である。
3年後に私がそのメンバーになるとは露知らず・・・

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星とは関係ないが、この年の大トピックス(笑)は、
広島カープのセントラルリーグ初優勝だ!
10月15日。 優勝の瞬間は大勢の人たちと喜びを共有したくて、
中心街のデパートの電器売り場のテレビの前に陣取った。
午後5時18分に悲願の優勝が決定すると店内放送が流れた。
「お知らせいたします。只今広島カープが栄えあるセ・リーグ初優勝を決めました」
テレビの前だけではなく、店内のあちこちから拍手が沸き起こった。
カープ優勝日の日記

カープ優勝当日の日記(部分)  
星日記だけに
背後の記事や暦は天文ファン用
この日ばかりは
ただの野球ファンモード
カープ万歳!!

この頃、ひとつの大物彗星が太陽系の中心部めがけて接近中だった・・・。