惑星の動きや現象を表すキーワード

太陽を回る地球の兄弟星=惑星のうち肉眼で容易に見られるのは、
水星・金星・火星・木星・土星の5つの星です。
(天王星も6等級ですから、空の暗い場所ならばその存在は肉眼でわかります。)

星座を形づくってお互いの位置を変えない恒星に対して、
惑星は、動き回る、明るさも変わるということで、大昔の人々はずいぶん戸惑いました。
まるでこれらが、星空の間を惑うように行ったり来たりするから「惑星」となった・・・
と思ってもいいのではないでしょうか。

惑星が惑星たる所以

惑星の動きにはパターンがあります。 
普段は星座の星々の間を
西から東へと移動します。これを「順行(じゅんこう)」と呼んでいます。
昔の学者を悩ませたのが、時折みせる惑星のへそ曲がりな動き方です。
順行をしていた惑星が、東への歩みを止めて反転。今度は
西へ動き出すのです。
東へ移動する順行に対して、こちらの動きは「
逆行(ぎゃっこう)」と呼びます。

惑星の動きの例
2003年大接近前後の火星の動き


火星は動きが大きく、その炎のような色合いもあって、
太古から注目されてきた惑星。
火星の運動を調べて、ケプラーが「3大法則」を見出したのは
有名なエピソード。
ただ、「時折逆行する」と言っても実は決まりがあって、その惑星が、地球に近づく前後に
こうした複雑な動きを見せるのです。
順行から逆行、逆行から順行へと動きが変わるときには、惑星の動きが殆ど止まります。
これを「
(りゅう)」と言います。

こうした複雑(・・・でもありませんが)な惑星の動きを説明するのに
太古から中世までの学者があれこれ挑みましたが、なかなかうまくいきません。
ひとつには「天動説」、つまり地球中心という宗教的色彩の強い考えに支配されていたため、
自然の法則として、惑星の動きを説明することができなかったのです。
ようやく光明が射したのは、コペルニクスによる「地動説」、すなわち太陽中心の惑星系
=太陽系の姿が描かれてからのことです。
太陽中心に、水星・金星・地球(周囲に月)・火星・木星・土星という軌道を描くことで、
あれほど難解だった惑星の動きが、順行、逆行を含めてあっさり説明できたのです。

惑星の動きのタネ明かし
火星がループを描く秘密はこれだ

惑星は(地球を含め)外側ほど軌道上の速度が遅い。
この速度差のため、惑星同士の追い抜き前後には、
星空に対する動きが逆転するように見えるのです。
地動説で初めて可能になった解釈。
地球より外側を公転する火星・木星・土星などの「外惑星」は、逆行するのが
地球が並んで追い抜く(=接近する)頃。 このために外惑星の逆行の様子は観察し易いです。
しかし地球の内側を公転する水星・金星(=内惑星)の逆行は、
内惑星が太陽と地球の間に入って地球を追い抜く前後になります。 
地球からは、みかけ上太陽の方向なので、星空を逆行する様子は観察が難しいのです。


惑星現象を理解する

惑星と地球との位置関係などを表す言葉はそんなにたくさんありません。
それでいて、これを覚えてしまうと、天文関係の年表や暦がとても役立ちますし、
頭の中で、太陽系の惑星の動きが生き生きとイメージできるようになります。

まず外惑星(火星〜冥王星)です。
覚えて欲しい言葉は「衝」「合」「東矩」「西矩」のたった4つです。

外惑星の現象
位置関係と名称

地球と太陽を結ぶ線より右(西)側は明け方の空、
左(東)側は夕方の空にあたります。
地球から見て、太陽より先に上るか
あとに沈むかなどを考えてみてください。

(しょう)」は、外惑星・地球・太陽の順に直線上に天体が並ぶ位置のこと。
外惑星は地球に一番近く、太陽とは180度の正反対の空に位置します。
太陽と正反対ということは満月と同じで、夕方東に姿を見せ、真夜中に南中します。
そして夜明けに西に沈んでいくというわけで一晩中見ることができます。
地球に近く、地球に向いた面全体に太陽の光が当たっているので
表面の観測にはもってこいの時期なのです。
(火星だけは軌道のゆがみが大きく、普通、地球にいちばん近づく日が数日ずれます。
 このため火星だけは特に「最接近」も天文暦に載せられます)

地球のほうが軌道が小さい上にスピードが速いので、衝を過ぎると
外惑星は取り残されて離れていきます。
みかけ上は太陽の東側に回って、太陽との離角が少しずつ縮まっていきます。
やがて太陽から東に90度の位置に来ますがこれを「
東矩(とうく)」と言います。
上弦の半月と同じで、この頃の外惑星は日没に南中し、夜半頃に西に没していきます。

外惑星は星空を東へ(順行)進み、太陽から逃げるような動きになりますが、
やがてみかけ上、太陽が追いついて「
(ごう)」になります。
合には「天体が重なる、並ぶ」といった意味があります。
太陽系スケールでは、地球・太陽・外惑星の順に直線上に並んだときです。
太陽をはさんでいちばん向こう側に行ってしまうので、外惑星のみかけはいちばん小さく、
しかもまぶしい太陽の向こう側ですから、事実上地球から見ることは不可能です。

合を過ぎると外惑星は太陽に取り残されるように西側に顔を出すようになります。
つまり合が終わった外惑星は、まず明け方の東天に上るようになるのです。
(太陽の西側、180度までの天体は、太陽より先に上ってきて、先に沈むというわけです)
太陽からの離角が西に90度になったときが「
西矩(せいく)」です。
これは下弦の半月と同じで、夜半に東に姿を見せ、南中した頃に夜が分けて消えていきます。
西矩をすぎると、地球は外惑星をぐんぐん追い上げて、やがて次の衝が巡ってくるのです。

次に
内惑星です。言葉は「内合」「外合」「東方最大離角」「西方最大離角」の4つ。

内惑星の現象
位置関係と名称


太陽の右(西)側にあるとき、内惑星は明け方の東天に。
左(東)側にあるときには夕方の西天に見えることになります。

内惑星(水星・金星)は、太陽からある角度以上は離れてみえることはありません。
その角度は水星で18〜27度。大きな幅があるのは水星の軌道がかなりゆがんでいるからです。
金星は47〜48度ほど。水星に比べると軌道が真円に近いのでいつも同じくらいです。
このように東または西に内惑星がいちばん離れて見えるのが、
東方最大離角(とうほうさいだいりかく)」「西方最大離角(せいほうさいだいりかく)」です。
金星は太陽からかなり離れ、しかもとても明るいので、最大離角以外の時期でも
割合よく見ることができます。しかし水星はいつも太陽のそばをうろちょろしているので、
最大離角の頃を狙いすまさないと、なかなかお目にかかれません。
また、同じだけ太陽から離れても、季節によって太陽の通り道である黄道の傾きが
大きく変化するのでこれも見やすさに影響します。夕方は春、明け方は秋の条件が良いのです。

内惑星の高度と季節の関係

惑星はほぼ黄道に沿って運行しています。
このため、内惑星を見るには季節による黄道の傾きが
地平線からの高さに大きく影響するのです。
特に水星を見るなら春の東方最大離角前後の夕空。
明け方なら、秋の西方最大離角前後を狙わなくてはいけません。

内惑星には太陽と同じ方向になる合が2つあります。
太陽の向こう側に行ってしまうのは、外惑星の合と同じようなもので「
外合(がいごう)」。
内惑星太陽の手前側に入って直線に並ぶ位置を「
内合(ないごう)」と呼んで区別します。
外合は、まったく観測のしようもありません。 内合は、内惑星が地球にいちばん近く、
望遠鏡で見たときの大きさが最も大きいのですが、地球に向いているのは真っ暗な夜の側。
しかも太陽方向なのでやはり見ることは困難です。
ただし、内惑星には特別な現象があります。それは内合の際に南北方向も一致して、
本当に一直線上に地球・内惑星・太陽が並んだときに起きる現象で「日面通過」と言います。
読んで字の如し。明るい太陽面を内惑星が黒いシルエットとなって通過していく現象です。
水星も金星も軌道がやや傾いているので、内合のたびに日面通過とはなりません。
水星は10年に一度くらい起こり、最近ではは2003年5月7日です。
金星の日面通過は非常に珍しい現象です。前回は1874年と1882年。なんと明治時代です。
次は2004年の6月8日、2012年6月5〜6日と続けて起きますが、その次は22世紀に入ります。

内惑星の現象は、外合→東方最大離角→内合→西方最大離角の順に起きます。
金星だけにある現象で「
最大光度(さいだいこうど)」というものがあります。
金星は内合の頃には地球に4000万kmまで接近しますが、
これは火星の大接近(約5600万km)に比べてもかなり近く、
実は地球にいちばん近づく惑星は金星だったのです。
それだけに内合が近づくと、金星のみかけの大きさはぐんぐん大きくなります。
同時に、地球と太陽の間に割り込んでくるので、地球から見ると
光った面がどんどん細い三日月状になってきます。
大きくなるのと光った部分が減るという背反する要素の最大公約数的な位置が
最大光度なのです。金星はこのときに最も明るく、1等星の100倍以上という
素晴らしい輝きを見せます。 最大光度は内合の前後36日目あたりで、
最大離角と内合の中間あたりになります。

さあ、惑星現象をずいぶんと勉強しました。
2004年の主な
惑星現象を列記しておきますので、あれこれ考えてみてください。
惑星 現象と日付
水星 東方最大離角3/29、7/27、11/21 西方最大離角1/17、5/15、9/9、12/301
金星 東方最大離角3/30、最大光度5/2(−4.5等級)、内合(日面通過)6/8、
最大光度7/15(−4.5等級)、西方最大離隔8/18

火星 合9/15
木星 留1/4、衝3/4、留5/5、東矩5/31、合9/22、
土星 衝1/1、留3/8、東矩3/27、合7/9、西矩10/20、留11/8